川越の電機器具メーカー (株)H製作所を訪問して

投稿者:中村憲雄(技術士(機械))


モノヅクリ中小企業の 発展の条件                      

——–川越の電機器具メーカー (株)H製作所を訪問して (19-3-6川越技術士会)——–

 

(株)H製作所は、私も所属している川越技術士会(川越テクノサポート)が、継続的に支援させて頂いている優良企業の1つである。今回はH専務のご厚意により、新社屋の本社と工場を見学させて頂いた。

  1. 当社の強み

当社のフィロソフィーに「オンリーワン技術・ナンバーワン製品」が謳われている。商品群は全て自社の技術とアイデアによるものである。大変大きな強みと言える。例えばメイン商品の1つに「アクリルグローブ」と呼ばれる大型街路灯カバーがある。

 

  1. アクリルグローブの製造方法

これはインジェクション成型と超厚肉のブロー成型を組み合わせて製造されている。ブロー金型の継ぎ目が殆んど見えない美しい高級品である。古い成型設備を改良・工夫し、独自の金型技術により量産されている。

アクリルグローブなど当社製品の展示品例

 

ブロー成型機と金型

 

  1. 当社の特徴

当社の歴史は創業以来70年を超えているが、資本金1,200万円、従業員35名の紛れもない中小企業である。平均年齢は35歳で大変若々しい。新社屋は経営トップの理念と従業員のアイデアによって完成された、大変効率的な気持ちの良いつくりになっている。Hフィロソフィーが体現されている。

 

オフィスは個人の業務推進と、相談・協力やコミュニケーションのバランスを良く考えたレイアウトである。

 

従業員の健康増進とレクリエーションを兼ねたトレーニングルーム

  1. 我が国のGDPの推移

我が国は1990年初頭のバブル崩壊以来、GDP(国内総生産)はそれまでの急激な右肩上がりから、現在に至るまでフラット化している。米国に次いでの世界第2位から、現在は第3位に甘んじている。しかし実状は中国には2倍以上水を開けられ、間もなくドイツに追いつかれようとしている。衰退の方向に進んでいる。

 

  1. 我が国の一人当たりの生産性の推移

GDPを人口で割った1人当たりGDPは、その国の「生産性の指標」である。当初は世界第3位であった。現在は第26位と急激な右肩下がりである。我が国の経済力は世界で1人負け状態と言える。「失なわれた20年」の実状でもある。現在も改善の兆しがほとんど見えない。

 

  1. 我が国のモノづくり企業の強みの強化

昔の日本企業の強みは、「改善・改革」であった。現在はこの熱い挑戦意欲が不足気味である。これを現在でさえも熱く地道に挑戦し実行する。これこそ企業も発展し、我が国の経済活性化にもつながる道である。ごく当たり前の手法である。皆の知恵をすり合わせること。連携・協力の良い仕組みを作ること。挑戦すること。

 

7. H製作所の底力

この当たり前の挑戦を続けている会社の1つがH製作所である。経営トップと従業員が一丸となり、自力で「オンリーワン技術・ナンバーワン製品」を目指し、技術力・経営力を日夜磨いている。不足する経営資源は「川越技術士会(川越テクノサポート)」の支援などで乗り切ろうとされている。

 

8. 発展途上の一面も

どんな大企業・有名企業でも、問題は毎日発生している。H製作所は大変素晴らしい会社であるが、発展途上でもある。開発系ものづくり企業として、様々な技術基準類・標準類の資料は良く管理されている。しかしルールはできた時には、その改善が始まるのである。例えば、現場の日程管理表はガントチャートであった。しかし各項目は繋がりがあり、PERT手法を取り入れても良いかも知れない。日程改善する仕組みと共に。

 

9. 我が国の強み強化の1つの方向性

企業の発展のためには、技術・経営・管理・人材育成など様々な要素のバランス良い向上が不可欠である。全てを例えば80点以上、自力でカバーすることが難しければ、例えば「川越技術士会(川越テクノサポート)」のような多機能の専門家集団の力を借りることも効果的である。どこにもない生産性の高い仕組みとも言える。今後とも、良い関係の更なる発展・向上に尽力して行きたい。我が国の経済発展にも貢献して行きたい。